ALC外壁とは?その特徴
ALCは「軽量気泡コンクリート」の略で、珪石・セメント・生石灰を主な原料にした外壁材です。
特殊な 「高温高圧蒸気養生」という製法で作られており、中に気泡を含んでいるのが大きな特徴です。
「コンクリート」と聞くと「重くて硬そう」という印象があるかもしれませんが、ALCはなんと、
通常のコンクリートの約1/4の軽さ!
そのため、施工しやすく、戸建てからビルまで幅広く使われています。
ALCの歴史と信頼性
ALCは1920年代中頃にスウェーデンで開発され、その後日本にも技術が導入されました。
現在では国内でも多くの建物に採用されており、長年の実績と高い信頼性があります。
ALCパネルの厚みには2種類あります
ALCには、使用する場所に応じて「厚型」と「薄型」の2種類があります。
- 厚型パネル(75mm以上)
→ 主にビルや鉄筋コンクリート造などの大型建物に使用されます。 - 薄型パネル(50mm以下)
→ 戸建て住宅や軽量鉄骨造の建物に使われるのが一般的です。
「ALC外壁って名前は聞くけど、実際どうなの?」と思っている方も多いのではないでしょうか。
ALCは、耐久性に優れた外壁材として、多くの住宅や建物に使われている人気の素材です。
ですが、メリットだけでなく、注意すべきデメリットも存在します。
今回はそんなALC外壁の「特徴・メリット・デメリット」に加え、
長持ちさせるためのメンテナンス方法まで、事務スタッフ目線でやさしく解説していきます!
ALC外壁のメリットと注意点
耐久性に優れている
ALC外壁は高い耐久性を持っており、長く快適に暮らせる建材として広く採用されています。
しっかりとメンテナンスすれば、30年〜50年という長期使用も可能です。
注意点:水に弱いという唯一の弱点
ALC外壁には多くのメリットがありますが、唯一の弱点は「水に弱いこと」です。
パネル表面には無数の細かい穴(多孔質構造)があり、
非常に水を吸収しやすい性質を持っています。
これらの穴をふさぐために、外壁表面には塗膜(防水塗装)が施されていますが、
塗装が劣化すると防水性が失われてしまうのです。
定期的な塗装メンテナンスが必要です
ALC外壁材そのものには防水性がありません。
防水性能は塗装によって得られるため、塗膜の劣化を放置すると建材に直接水が染み込んでしまいます。
そのため、ALC外壁を長持ちさせるには
定期的な塗装メンテナンス(約10〜12年ごと)が非常に重要です。
耐火性に優れている
ALC外壁は、燃えにくく、火災にも強い安心の素材です。
主な原料であるセメントや珪石などの無機質成分は、非常に燃えにくい特性を持っており、
万が一の火災時にも有害ガスが発生しにくいという安全性があります。
さらに、ALCは熱を伝えにくい性質があるため、
近隣で火災が起きても延焼リスクを抑える効果が期待できます。
断熱性に優れている
ALC外壁は、断熱性が高く、光熱費の節約にもつながる優秀な外壁材です。
ALC内部には無数の気泡があり、空気の層を作ることで熱の伝わりを抑える構造になっています。
その断熱性能は、通常のコンクリートの約10倍ともいわれ、
断熱材と併用することで、夏は涼しく、冬は暖かい快適な室内環境を維持しやすくなります。
結果的に、エアコンや暖房器具の使用頻度が抑えられ、
毎月の光熱費の節約にもつながります。
遮音性が高い
ALC外壁は、遮音性が高く、静かで快適な住まいを実現できる外壁材です。
内部にたくさんの気泡を含んでいる構造が、
音を吸収し、外部の騒音が室内に伝わりにくい効果を生み出します。
また、室内の音も外に漏れにくく、プライバシー性の高い空間を保つことができます。
この優れた遮音性能は、新幹線のホームや線路沿いの建物にも採用されているほど。
騒音が気になる環境でも、静かで落ち着いた生活空間を実現できます。
軽量で建物への負担が少なく、耐震性にも優れる
ALC外壁は、通常のコンクリートの約1/4の重さという非常に軽量な素材です。
そのため、建物全体の重量を軽減でき、地震発生時の揺れを抑える効果が期待できます。
建物への負担が少ない設計になることで、
耐震性を高めたい住宅や建物にも最適とされています。
地震の多い日本においても、安心して使える外壁材として選ばれている理由のひとつです。
ALC外壁のデメリット
吸水性が高い
ALC外壁の最大の弱点は、水に弱い構造であることです。
パネルの表面には無数の細かい穴(多孔質構造)が開いており、
非常に水を吸収しやすい性質を持っています。
内部の気泡に水が入ると、膨張によってひび割れを引き起こしたり、
寒冷地では凍結による剥がれが発生するリスクもあります。
適切なメンテナンスを怠ると、塗膜が剥がれて耐久性が大きく低下してしまうため注意が必要です。
初期費用が高い
ALC外壁は、初期費用がやや高額になる点もデメリットのひとつです。
これは、外壁材自体の材料コストが高いことや、
製造できるメーカーが限られているという事情があります。
ALCは「JIS A 5416」という日本工業規格の認証を取得した企業でないと生産できません。
国内でこの認証を持っているのはわずか3社のみです。
目地が多い
ALC外壁パネルは、縦にも横にも目地が多いのが特徴です。
目地は経年劣化により隙間が発生しやすく、
雨水の侵入経路となるリスクがあります。
目地が多い分、劣化したときのメンテナンス範囲が広くなり、
雨漏りを防ぐには定期的なコーキング補修が不可欠です。
劣化症状に注意!
こんなサインが出たら塗り替えのタイミング
見た目が頑丈そうなALC外壁ですが、コーキングの劣化やひび割れが見られた時点で、早めのメンテナンスをおすすめします。
ALC外壁は定期的な塗装を行うことで、経年劣化を最小限に抑えて長持ちさせることができます。
以下のような症状が見られたら、塗り替えのサインです。
チョーキング現象
外壁を手で触ったときに、白い粉が手につくことはありませんか?
これは「チョーキング現象」と呼ばれ、塗膜の劣化によって起こるサインです。
紫外線や雨風で塗膜が徐々に劣化し、粉状に変化して表面に現れます。
これは本格的な劣化の初期段階です。
すぐに工事が必要ではありませんが、塗り替えの目安としてとても重要。
見つけたら専門業者に相談するのが安心です。
目地の亀裂
ALC外壁は縦横に目地が多いため、目地の劣化は深刻なトラブルにつながります。
塗膜の劣化により目地にひび割れが生じると、その下のコーキングまで傷む可能性があります。
そこから雨水が侵入し、内部の鉄筋が錆びて爆裂(膨張・剥がれ)を起こすことも。
特にALCはコーキング打ち替えが大がかりになりやすいため、早期対応が費用削減につながります。
ひび割れ(クラック)
ALC外壁にひび割れが発生した場合は、早急な対応が必要です。
水が侵入すると内部劣化・腐食が進み、外壁全体の寿命を縮める原因となります。
特に横方向のひび割れは水がたまりやすく、被害が拡大しやすいため注意が必要です。
コケ・カビ・藻の発生
塗膜が劣化すると防水性が失われ、コケ・カビ・藻が繁殖しやすくなります。
これらの発生は水分を吸っている証拠で、外壁材の劣化が進んでいるサインでもあります。
初期なら高圧洗浄などで除去できますが、状態によっては再塗装が必要になることも。
専門業者による点検をおすすめします。
色褪せ・変色
塗膜は紫外線や雨風により徐々に劣化し、色褪せや変色が起こります。
見た目の問題だけでなく、これは塗膜の劣化初期症状であり、防水性低下のサインです。
外壁の色に違和感を感じたら、一度専門業者にチェックしてもらいましょう。
膨れ
ALCは断熱性が高いため、熱がこもりやすく、日差しなどで壁の温度が上がると、塗膜が膨張しやすくなります。
また、施工不良(下地処理不足)が原因で膨れが起こることもあります。
表面に違和感を感じたら、早めに専門業者へ相談することが大切です。
剥落・欠損
ALC外壁はコンクリート製ですが、軽量ゆえに衝撃に弱いという特徴があります。
欠損部分を放置すると、気泡から水が入り込み、内部が腐食・破損する恐れがあります。
小さな破損でも、早めの補修が外壁全体を守る鍵になります。
🛠️ メンテナンス方法
塗り替え
ALC外壁は水に弱いため、塗装による防水保護が必須です。
しかし、塗装は紫外線や風雨で徐々に劣化するため、定期的な塗り替えが欠かせません。
透湿性能の重要性
ALC外壁の塗装には、透湿性能(湿気を外に逃がす性質)が高い塗料を選ぶことが大切です。
透湿性の低い塗料で覆ってしまうと、水蒸気が塗膜の中にたまり、膨れや剥がれなどのトラブルにつながることも。
塗り替えの目安
一般的な目安は7~10年程度です。
ただし、立地・日当たり・雨風の影響によって劣化スピードは変わります。
塗膜の劣化や変色などのサインが出たら、年数に関わらず早めに対処するのがおすすめです。
コーキングの補修
ALC外壁は、パネル同士の継ぎ目(目地)をコーキング材で埋める構造です。
目地の数が多く、コーキングの役割が非常に重要です。
特にALC外壁は、内側に防水シート(二次防水)を設けていないため、
目地からの雨水の侵入は直接雨漏りにつながる危険があります。
そのため、定期的な点検と補修は必須です。
コーキング補修の方法と費用の目安
劣化の程度によって、以下の2つの補修方法があります。
- ① 打ち増し(既存の上から新しいコーキングを重ねる)
→ 軽度の劣化時に対応。比較的安価で工事も短期間。 - ② 打ち替え(既存をすべて撤去して新しく打ち直す)
→ ひび割れ・硬化・剥離など重度の劣化時。費用と手間はかかるが安心。
一般的な目安費用:
打ち増し:500〜900円/m前後、打ち替え:900〜1,500円/m前後
※相場は地域や業者により変動します。
打ち替え(約700~1,000円/m)⇒ 古いコーキングをすべて撤去し、新しいコーキング材に入れ替える方法です。
-
増し打ち(約400~700円/m) ⇒ 既存のコーキングがまだしっかりしている場合、その上から新たにコーキングを重ねる方法です。
早めの対応が、雨漏りや大規模補修のリスクを減らすカギになります。気になる場合は、専門業者に相談してみましょう。
カバー工法
塗り替え以外の選択肢として、「カバー工法」という方法があります。
カバー工法とは、既存の外壁材を撤去せずに、
そのまま上から新しい外壁材を重ねて施工する方法です。
🔹 カバー工法のメリット
-
- ✅ 解体費用がかからないため、コストを抑えられる
- ✅ 工期が短縮できる
- ✅ 外壁材を再利用することで環境にも優しい
使用する外壁材の種類
ALC外壁にカバー工法を行う場合は、軽量で耐震性に優れた外壁材を選びます。
おすすめは「金属サイディング」や「窯業系サイディング」。
特に金属サイディングは非常に軽量で、施工性・耐震性ともに優れています。
カバー工法の効果
- 断熱性の向上 → 夏涼しく冬暖かい快適な室内環境に
- 防音性の向上 → 騒音が気になる方におすすめ
外壁を一新したい方や、より快適な住環境を求める方には、カバー工法は有効な選択肢です。
張り替え
ALC外壁が著しく劣化している場合は、塗り替えやカバー工法では対応しきれないことがあります。
その場合には、既存の外壁をすべて撤去して張り替える必要があります。
ALC外壁の耐用年数
ALC外壁は約50年の耐用年数があるとされていますが、
これは定期的な塗装・点検などのメンテナンスをきちんと行った場合に限ります。
適切な手入れを怠ると、50年未満での張り替えが必要になるケースもあります。
外壁の全面張り替えは費用も工期も大きくなりますが、
建物の寿命を延ばす最後の手段として重要な選択肢です。
メンテナンスの必要性を理解したうえで、費用相場や節約のポイントを知っておくと安心です。
👉
【ALC外壁】メンテナンス費用の相場と抑えるコツ
ALC外壁を使用する際の注意点
防水性の高い塗料を選ぶ
ALC外壁は水に弱い素材のため、防水性の高い塗料でしっかりと保護する必要があります。
一般的には、シリコン系やフッ素系の水性塗料が推奨されます。
塗料によって耐久性・価格・透湿性が異なるため、業者と相談しながら選定することが大切です。
透湿性の高い塗料を使う
ALC外壁は多孔質構造で、内部に細かな気泡を含んでいます。
そのため、湿気を外へ逃がせる「透湿性の高い塗料」が必須です。
特に日当たりの良い面では、内部の水分が蒸発しようとして塗膜の膨れ(熱膨れ)を引き起こすことがあります。
これを防ぐためにも、塗料選びは経験豊富な業者に相談しましょう。
コーキングは適切なタイミングで補修
ALC外壁の継ぎ目(目地)には、コーキング材が使用されています。
この部分が劣化すると、雨漏りの原因になるため注意が必要です。
特にALC外壁は、防水シート(二次防水)がない構造のため、目地の劣化が直接リスクになります。
劣化のサイン:ひび割れ・剥離・肉やせ
寿命の目安:7〜8年程度
これらの症状が見られたら、早めの補修を専門業者に依頼しましょう。
約10年ごとに定期メンテナンスを
ALC外壁は、塗膜によって防水性を維持しています。
しかし、塗膜は経年劣化するため、10年を目安に定期点検とメンテナンスを行うことが重要です。
メンテナンスを怠ると、雨水侵入・内部腐食・耐久性低下といったリスクが高まります。
早期対応が、建物を長持ちさせる最も有効な手段です。
ALC施工の実績がある業者を選ぶ
工事を依頼する際は、ALC外壁の施工実績が豊富な業者を選ぶことが大前提です。
現在の住宅の多くは「窯業系サイディング」で、ALCの扱いに慣れていない業者も存在します。
契約前に、ALC外壁の塗装経験があるかどうかを必ず確認しましょう。
実績・写真・保証内容なども合わせて確認するのが安心です。
外壁材との他の見分け方
目地の状態 | 判別される外壁材 | 補足説明 |
---|---|---|
目地がある | 窯業系サイディング / ALC外壁 | 窯業系は一般的な外壁材。ALCも目地があり、素材で見分ける必要あり。 |
目地がない | モルタル外壁 / 樹脂系サイディング | 塗り壁風。つなぎ目がないためスッキリした見た目。 |
目地はあるが目立たない | 金属系サイディング | 叩くと硬い金属音がする。軽量で加工性が高い素材。 |
目地とタイルが別素材で分かれている | タイル外壁 | タイルと目地が一体成型ではない点がポイント。 |
🔍ALC
目地があるサイディングとALCを見分けるのは難しいかもしれませんが、ボードの厚さで判断する事が出来ます。
他の外壁材と比べるとALCは大変分厚い壁と言えます。窯業系サイディングと比べるとほぼ倍近くの厚さで100mm以上のものが多いです。また判断基準の一つとして、ALCは窓が外壁の面よりも内側にあることが多いです(出窓は除きます)。
パネルの幅もALCは90mm幅が多くサイディングより広いです。またサイディングボードの垂直方向の合わせ目は圧着なので、コーキングが横方向に充填されることはほとんどありません。
ALC外壁はとても丈夫な素材ですが、長く安心して使うには、定期的なメンテナンスがとても大切です。
「ALC外壁ってお手入れが大変なの?」「どんな塗料でも使えるの?」など、実際にお客様からいただくご質問もたくさんあります。
そこで、よくある疑問にお答えするQ&A形式の記事をご用意しました。
ALC外壁のメンテナンスで気になることがあれば、ぜひ参考にしてみてください。
まとめ
ALC外壁とは?
ALC(軽量気泡コンクリート)は、通常のコンクリートの約1/4の軽さで、断熱性・耐火性に優れた外壁材です。
工場生産で品質が安定しており、戸建てからビルまで広く使われています。
ただし、「水に弱い」という性質があるため、防水性の高い塗料で定期的に保護することが大切です。
✅ ALC外壁のメリット
- 50年以上の高い耐久性!
- 断熱性が高く、夏涼しく冬暖かい!
- 耐火性に優れ、安全性もバッチリ!
⚠️ ALC外壁のデメリット
- 吸水性が高く、水による劣化リスクがある
- 初期費用が高め
長く使うにはメンテナンスが必須
ALC外壁の耐用年数50年以上という長寿命は、「定期的なメンテナンスありき」の数字です。
塗膜の再塗装だけでなく、クラックの修復や下地処理を丁寧に行うことが大切です。
さらに、高耐久かつ防水性のあるコーキング材を使うことで、外壁の防水性能を長期間キープできます。
ALC外壁をベストな状態で維持するには、劣化のサインを早めにキャッチして、
住宅に合った最適な修繕方法でリフォームを計画していくことが重要です。
事務スタッフからのひとこと
私は普段、カラーシミュレーションやお客様対応をしながら、
「ALC外壁って意外と知られていないな…」「どう説明すれば伝わるかな?」と感じることが多くあります。
この記事では、専門職ではない立場から、お客様と同じ目線で「わかりやすく・失敗しないために」大切なことをまとめました。
塗装工事ってむずかしそう…と思われがちですが、正しい知識と業者選びができれば心配いりません。
この記事が少しでもお役に立てたらうれしいです。