紫外線、降雨、温度変化など様々な自然現象からコーキングの劣化状況は変わってきますが・・・。
今回のご質問の中で窓まわり(サッシ)という箇所が出ております。窓まわり(サッシ)の周囲にもコーキングが施されていますが、構造上の問題でコーキングをすべて除去することが難しい場合があります。その場合は、劣化している分だけを取り除き、その上からコーキングをする増し打ちという方法をとる場合がございます。また窓まわり(サッシ)は雨漏れの危険性もあるので、密着不良などなければ、増し打ちの方が雨漏れの心配がなくなります。また窓まわり(サッシ)には防水テープが張ってありコーキングを撤去することで防水テープを痛めてしまうこともあります。このような理由から窓まわり(サッシ)の場合、現況判断で施工する場合があり、絶対的に撤去しなくてはならないというわけではありません。
逆に撤去打ち替えの場合もあります。 外壁材は、常に自然環境に晒されているため、太陽光や雨の影響を受け伸縮したり、地震・風により外壁材がずれることがあります。またジョイント目地は、ワーキングジョイントと言って建物が動く時に目地間で動きを逃がすので、破断している率が高いのです。このためサイディングの目地は、劣化が早く撤去打ち替えをしています。 施工部位や劣化の状態によって最適な施工をするのが良いと思います。
コーキング(シーリング)とは
コーキングを英語で直訳すると「詰め物をする」という意味。
「コーキング工事をする」=「サイディング外壁材のボードとボードの間にできる隙間に詰め物をして、隙間から水や汚れなどが入るのを防ぐ工事をする」という意味合いになります。
サイディング外壁材にあるボードとボードの境目にある継ぎ目を「目地」といいますが、この場所と窓などのサッシまわりには、シールという、ゴム状のものが埋め込まれています。このシールの事をコーキング・シーリングともいいます。新築時、サイディングボードを張り終わった工事の後、はじめはマヨネーズ状になっているシールを目地などに注入していき、時間がたつとゴム状に固まっていきます。
コーキングの役割
コーキングの役割は
①建物内に水が浸入することを防ぐ
②緩衝材として衝撃を吸収する
という2つがあります。
サイディングボードやALC外壁の隙間を埋めるものとして使われますが、パネルとパネルの間には隙間ができるのでそこにコーキング材をつめて、外壁から水や汚れが侵入しないようにする役割があります。外壁は外気の温度差による膨張伸縮、地震の揺れ、家の歪みなど、目視では確認できないですが常に何らかのダメージを受けています。それらのダメージを和らげる役割がコーキング材にあります。他にも、壁の補修材としても広い用途で使われています。
コーキングの劣化の時期
一般的には新築で建ててから約10年がリフォームをする目安の時期と言われています。
しかしここでひとつ注意しておかなければならないことは、コーキングの目地は、外壁材よりも傷みが早いということです。コーキングは3年から5年もすれば劣化してきます。劣化は、コーキングの剥がれ、ひび割れ、シワ、などの現象で確認できます。コーキングは「水」「紫外線」によって劣化してきます。紫外線の影響をあまり受けない北側の外壁と日頃より紫外線に多く晒されている南側の外壁とでは傷み具合は異なってきます。コーキングの劣化が進むと、雨漏りが起きて建物内部が腐食するなど、家自体の寿命を縮める事態を招きかねないので要注意です。
また補修方法としては、「打ち替え(劣化した元のコーキングを全て撤去して、まったく新しいコーキングを充填する施工法)」「増し打ち(劣化したコーキングの上から新しいコーキングを充填する施工法)」という方法があります。
コーキング劣化の症状
劣化の原因は様々ですが、太陽光を浴びたり、雨風に晒されたり、地震の時に建物が揺れる時に力が加わるなどの原因で劣化していきます。
しわ・ひび割れ
紫外線により、シーリングが伸びたり縮んだりする状態です。また地震などにより建物の動きに追従できずに、ひび割れてしまいます。
剥離
サイディングボードの断面から、剥離していきます。紫外線による肉やせも原因ですが、新築施工時のシール注入前に行なう、プライマー(接着剤)不足も考えられます。ひび割れが大きくなることで破断が発生します。補修の緊急性が高い劣化症状です。
肉やせ
シーリングの分量が少なくなることで起こる現象です。
劣化とともに、シールそのものがやせ細っています。新築時に施工したときのシールのボリューム不足も考えられます。
ベタベタ・柔らかくなる
壁の塗装に可塑剤(かそざい)という柔らかさを増す材料が使われている場合、コーキングがこのような状況になることがあります。
コーキングの「打ち替え」手順
①コーキング材の除去
古いコーキング材をキレイに除去します。壁に密着しているコーキング材もカッターでキレイに除去していきます。この際の注意点は外壁の表面を傷つけないように外壁小口を削るようにすることです。切れ目を入れることで劣化したコーキングを簡単に取り出せます。接着面にゴミ、油分、水分が残っているとコーキング材の接着不良に繋がり、剥離の原因となってしまいますのできれいに取り除きます。
②養生テープ(はみ出し防止のテープ貼り)
外壁にコーキング材を付けないよう、目地のまわりに養生テープを貼ります。古いコーキングがとれたら、コーキング材が余計な場所につかないようにサイディングボード部分を養生テープでしっかり保護します。
③プライマー(下塗り材)の塗布
コーキグン材を塗る前に下塗り剤の接着プライマーを塗布します。プライマーを塗布することにより、その後のコーキング材の密着性を高める接着剤としての役割と、塗装面の凸凹をなめらかに整える役割を担っています。
④コーキング材の充填
コーキングガンを使用して、目地部分にコーキング材を注入していきます。目地に気泡や打ち残しがないよう隅々までコーキング材を盛り上げるように充填します。コーキング材の充填は、上から下へ向かって充填していきます。
⑤へらならし
コーキングを充填したあと、空気が入らないようにヘラでしっかり密着させ均一にならします。1往復以上押さえこむようにしてならしていきます。
⑥養生テープ除去、乾燥
養生テープをはがして乾燥させます。表面が乾いてくるとテープを除去する際、充填したコーキング材が養生テープと一緒に剥がれてしまったりすることがあるので注意が必要です。コーキング材やプライマーが充填箇所以外に付着していた場合はきれいな布等で完全にふき取っておきます。
コーキング「増し打ち」手順
①養生(はみ出し防止のテープ貼り)
↓
②プライマー(下塗り材)の塗布
↓
③コーキング材の充填
↓
④へらならし
↓
⑤養生テープの除去、乾燥
コーキング材の種類
シリコン
シリコンはコストパフォーマンスに優れており、耐水性・耐熱性・耐候性に優れています。上からの塗装に不向きなため外壁・屋根等には使用しません。主に使用する箇所は室内で、防カビ性があるため特に洗面所・浴室などの水まわりでの用途があります。しかし注意が必要なのが、シリコンを充填してしまうとシリコンオイルという油のようなものが常に出続ける為、コーキング剤を塗布した周辺(目地)を汚染するというデメリットがあります。
主な使用場所
・キッチンまわり ・浴槽まわり ・トイレ
メリット
・耐久性に優れている ・比較的価格が安い
・密着性に優れていてプライマーなしでも施工できる ・乾燥が早い
デメリット
・上に塗料が塗れない ・シリコンオイルにより周囲が汚染する ・2液タイプは硬く使用しづらい
変性シリコン
シリコンと名前が付いてますが、上記のシリコンとは別です。 硬化後はシリコン系のコーキング材と違い塗装可能でカラーも豊富です。塗料により、はじきやベタツキが発生することもあります。 外壁の目地・窓まわり・屋根板金・配管など幅広く使えます。
耐候性が高く、外壁や屋根などに多く使用されています。耐久性はシリコン、ウレタンに比べると劣りますが、塗装前でも塗装後でも使用できる最も優れたコーキング材の種類です。
主な使用場所
・一般建築物の内外装の目地、窓まわり(サッシ)・モルタル、コンクリートの目地およびクラック(ひび割れ)、タイル目地など ・各種屋根材、各種金属の目地、接合部のシールなど
メリット
・使用用途が幅広い ・上から塗装可能 ・周囲の汚染が少ない
デメリット
・シリコンに比べると価格が若干高い ・プライマーが必要 ・上に塗る塗料によりはじき・ベタツキが発生する場合がある
ウレタン
耐久性の高いコーキング材の一つです。硬化後はゴム弾力性を持ち、クラック補修や目地の補修に使用されます。ただし、紫外線に弱いため目地やガラスまわりには使用できません。
ウレタンは紫外線に弱く、劣化するとホコリを吸い付けてしまい汚れやすいため、上から塗膜で被せる場合に使用します。 ノンブリードタイプのものもあり、塗装後の汚染が少ないといえます。コーキング後の塗装が決まっていれば変成シリコンよりウレタンを選択した方がよい場合もあります。
主な使用場所
・一般建築物の内外装の目地、窓まわり(サッシ)など(充填後、要塗装)・モルタル、コンクリートの目地およびクラック(ひび割れ)、タイル目地など(充填後、要塗装) ・ウレタン防水などの端末シールや下地処理
メリット
・耐久性が非常に高い ・上から塗料可能 ・変成シリコンに比べると比較的価格は安い
デメリット
・紫外線に弱く露出できない(充填後、要塗装) ・充填後、コーキング材が痩せる
アクリル
硬化すると弾性体になり湿った箇所にも使用可能です。水性系のため作業がしやすいです。
主な使用場所
・モルタル、コンクリートの目地およびクラック(ひび割れ)、タイル目地 ・ALCのパネル目地など
メリット
・上から塗料可能 ・湿った箇所でも施工可能
デメリット
・耐久性が少ない ・充填後、コーキング材が痩せる ・ニーズが少ない
ポリサルファイド
耐熱性は変成シリコン系程ではないがよく、表面にゴミ、ほこりが付きにくい特性があります。一方柔軟性があまり無く金属類への使用には適さない材料です。 また、仕上げ材により塗料を変色・軟化させることがあるため、表面に塗装する場合には、汚染防止処理を行うことが必要です。
主な使用場所
・一般建築物の外装のタイル目地、窓まわり(サッシ)など ・カーテンウォールや石目地等
メリット
・耐久性が良い ・表面にゴミ、ほこりが付きにくい
・上に塗料を塗ると変色、軟化させる場合がある ・建物の追従性に弱い ・匂いがする
※コーキングには様々な種類のものがあります。変成シリコン系とウレタン系のものがよく外壁では使用されています。サイディング外壁にお住まいの方は、変成シリコン系及び、ウレタン系のものを選ぶことをおすすめします。
「シリコン系」はシリコン樹脂が原料、「変性シリコン系」はウレタン樹脂が原料となるコーキング剤です。「変性シリコン系」はウレタン系コーキング剤に機能性を付加したものです。
コーキング材の2つの施工方法
コーキングの施工方法は下記の二つがあります。
1成分型(一般の方向け)
「1成分型」と呼ばれ、そのまま充填できるタイプのコーキング材です。
ホームセンターなどでよく見かける、先端が尖った筒状のタイプを一般的に「1成分型コーキング材」と言います。缶のタイプもありますが、基本的には専用容器(カートリッジ)に入っておりコーキングガンを使用するものが多いです。混ぜ合わせる必要がないので手間がかかりません。 1本ずつ「カートリッジ」という筒に入っていますので、すぐに使用できるのがメリットです。
ただし2成分型と比べると価格が比較的高いです。
小面積の補修に対して使用することが多いものになります。
2成分型(業者向け)
硬化剤などを混ぜることによって硬化させるタイプのコーキング材で「2液型」とも呼ばれます。
施工や管理に専門技術が必要で手間がかかるため、一般の方よりはプロ仕様のコーキング材です。硬化剤と混ぜて使用し、1成分型のようにカートリッジを使用しないので、1成分型よりも価格は安い場合が多いです。
コーキング(シーリング)補修の価格・費用相場
コーキングの打ち替え・増し打ち工事にかかるおおよその費用相場は、以下の通りです。コーキング工事は、m単価で計算されることが多いため、合計数が長いほど費用も増します。
打ち替えの費用 約700~1,000円/m
増し打ちの費用 約400~ 700円/m
(※高所作業の場合、別途足場の設置費用必要)
まとめ
家を新築した後、まず最初に傷みだすのがコーキングです。
コーキングの役割は
①建物内に水が浸入することを防ぐ
②緩衝材として衝撃を吸収する
という2つがあります。
建物は外気の気温差などで目ではわからないレベルですが伸縮しますし、地震などでも揺れます。そんな建物の動きに追随して動きを吸収する役割をもっています。またサイディングなどはいくつかの壁を繋ぎ合わせてできています。その繋ぎ合わせた隙間にコーキング材を充填します。この隙間がないと建物の動きに耐え切れず壁に亀裂やひび割れが生じてしまいます。
このようにコーキングの役目はかなり重要になってきます。しかしコーキングも経年劣化してきます。コーキング材の耐用年数は、一般的に7年~8年程度であると言われております。
コーキングの補修方法としては、「打ち替え(劣化した元のコーキングを全て撤去して、まったく新しいコーキングを充填する施工法)」「増し打ち(劣化したコーキングの上から新しいコーキングを充填する施工法)」という方法があります。
部位によっては増し打ちの方が適切な場合もあります。例えば、窓まわり(サッシ)部分。
「窓の形状によって既存のシールが撤去出来ない時」「構造上、カッターを入れない方がいい時」
このような状況の時は窓まわり(サッシ)を増し打ちします。ツバが出ている形状の窓の場合はカッターの刃が入らず、既存シールの100%撤去が困難です。無理に撤去しようとすると窓を傷つけることになります。『増し打ち』を例にあげてみましたが、窓まわり(サッシ)はすべて増し打ちにしましょう・・・という話ではありません。基本的には、打替えに勝るものはありませんが、経年劣化の状況や予算の関係を考慮して施工方法はかわってきます。紫外線のあたりにくい北側の外壁は紫外線の強い南側に比べると劣化具合も遅く必ずしも打替えにしなくていい場合もございます。
現況をきちんと診断し、お見積もりの際ご予算にあわせた施工方法を相談してみると良いかと思います。10軒の家があれば10通りの施工方法があります。施工箇所の状態を見極め、ベストな施工方法をとることが大切です。