雨樋
雨樋とは雨水を集めて排水させる筒状の建材のことです。
一般住宅ではプラスチック製品をつかうことが多いです。
雨樋は軒先や建物のはじっこに取り付けられておりあまり目立たないので普段気に留めることがなく、どのような役割があるか詳しく知らないという方も多いかもしれませんが、雨の多い日本の建物にとっては必要な建材です。
もし雨樋がなければ…
屋根に落ちた雨水は住居の屋根全体から流れ落ち建物を腐食させる原因となったりします。
※雨樋は「とゆ」や「とよ」と呼ばれたりもします。
雨樋の歴史
日本最古の雨樋は「東大寺 法華堂」と言われています。当時は、生活用水や飲料水として雨水を屋根から水槽に導くためのものであったと考えられています。現在の上水道の役割をしていたようです。
一般に広く普及しだしたのは江戸時代になってからになります。住宅が密集することにより隣家と軒を接するようになったことや、幕府が瓦屋根にする用に奨励したからだと言われています。これに伴い隣家に雨水が流れ込んだり、跳ね返った雨だれが壁を汚したりするのを防ぐために樋を使用するようになります。こうして一般に普及していきました。
雨樋の役割
雨樋の主な役割は、屋根に降った雨を受け止めて軒先に集め、スムーズに地面の排水溝に流すことです。
雨水を受け止め適切に地上へ排水することで、建物の耐久性を高め、私たちの暮らしを安全に守っています。他にも重要な役割として、雨漏りの防止があります。雨が降ると屋根の勾配に沿って下に流れます。雨樋があればうまく排水されますが、なければすべて軒下に流れ落ちてしまいます。跳ね返った雨水や泥は外壁を汚し、時間がたつことで塗装を剥がし雨漏りの原因となる外壁のヒビ割れにつながります。
また、雨水の落下は土台や建物の基礎を傷めます。雨樋は排水装置だけではなく、雨漏り防止や建物の基礎を守る役割を果たしています。
雨樋が機能しない場合は、雨水の侵入に繋がります。雨水の侵入は、建物の躯体部分の腐食や湿気を好む白アリの発生にもつながります。その結果、建物の強度が低下し、建物の寿命は短くなるのです。また雨水が周囲に溜まると、コケやカビの発生の原因となります。コケやカビの発生は、アレルギーの原因となるため、住人の体調が損なわれる原因にもなるため注意が必要です。
雨樋がない場合の様々な被害
・庭が水浸しになる
・跳ね返りの水で外壁が汚れる
・地面への跳ね返りによって建物の基礎に雨水が侵入する
・シロアリ被害の可能性
・騒音が発生する
・通行人に迷惑をかける
このように雨樋がなかったら様々な被害をもたらすことになりますので、雨樋は、私たちの暮らしを安全に守る役割を果たしています。
雨樋に使用されている主な素材
塩化ビニール
塩化ビニール樹脂を原料にした素材で強度に優れております。また低コストで軽量なため、一般住宅で多く使われています。色やサイズ、形のバリエーションが多いため人気があります。
《劣化症状》ひび割れ 変色 変形
アルミニウム製
アルミニウム製のため、錆にくいです。熱による変形がなく、継ぎ目がないためデザイン性が優れています。また金属製ですので耐久性が抜群です。デメリットは住宅用としてはあまり流通していないため高額になってしまうという点です。
《劣化症状》経年劣化による白錆び
ステンレス
ステンレス製の大きな特徴は、アルミニウム製より錆が発生しにくいという点です。雨樋は雨にさらされ続ける部分なので、ステンレス製であれば美観を著しく損なうことはありません。
また、強度もあり耐久性が高いため多く使用されています。
《劣化症状》金具部分の劣化・サビ
銅
昔からあるような純和風の建物や、神社仏閣といった建物で多く使われているのが、この銅製の雨樋です。耐久性に優れ変色が起きにくいです。経年劣化することで徐々に銅らしい光沢を放ち、格調高い雰囲気を醸し出すのが魅力です。重量が大きく、高コストではありますが頑丈で破損しにくいです。
《劣化症状》酸性雨の影響による劣化進行、変色による美観の低下
5. ガルバリウム鋼板
ガルバリウム鋼板は鋼板にメッキを施しており、耐久性が高いという特徴があります。
錆にくいため耐用年数が他の素材と比べて非常に長いです。金属系の素材ではあるので、雨に長い間さらされる場合は注意が必要となります。また、施工価格が高めになるので一般住宅の雨樋ではあまり使用されません。
《劣化症状》もらい錆
雨樋のメンテナンス
塗装
塗装をする目的は保護や美観のためです。強固な素材でできている雨樋は耐久性が高いため、途中で塗装をする必要はありませんが、時間の経過とともに色褪せが起こり、古びた感じが出てきてしまいます。建物と日光の当たる向きによっては、雨樋の色がくっきり分かれている場合もあります。
※塗装で雨樋の不具合を解決することはありません
◎雨樋塗装をする場合3つの注意点
・ケレンで下地処理をしてもらう
・塗装は必ず2回以上塗ってもらう
・外壁や屋根と同じ耐久性の塗料で塗ってもらう
◎雨樋の色
雨樋の色でよく使用されるのが、ホワイト・ブラック・ブラウン・グレーになります。
雨樋の色選びで一番おすすめしているのは、サッシの色に合わせることです。サッシの色に合わせることでお住まいのデザインのバランスを崩さずにおしゃれに仕上がります。
また鼻隠しに合わせるのもいいです。鼻隠しや破風板に合わせることでデザインに一体感が生まれます。あまり雨樋の色にこだわりがない方は、サッシや鼻隠しに合わせるのをおすすめしています。
雨樋の失敗しない色選びのポイントは「雨樋を目出たせないこと」です。理由は古くなると割れや色褪せ変形などがでてきます。原色系の色を使用した場合、劣化が悪目立ちします。
劣化が悪目立ちするとお住まいの全体の雰囲気が崩れてしまいます。また一部だけ色が異なり美観を損ねることになるため、雨樋はメンテナンスしやすいカラーを選ぶようにしましょう。
【参考】リフォーム時の付帯部塗装はしないでも大丈夫?
部分補修
①接続部が緩んでいる・外れている
接続部が緩んでいる場合、そこから水が漏れてしまいますので、緩んでいる箇所を一度取り外し、接着剤を塗り再びはめなおします。
②小さなひび割れや穴が開いている
小さなひび割れや穴が開いているとそこから水から漏れたり溢れたりします。そのような場合は、汚れを落とし、アルミ製の雨樋補修用テープで補修したい箇所を覆うようにテープを巻いていきます。
部分交換
①一部破損や一部欠落している
部分的に割れや破損、また欠落していたりする場合はその部分を新しく交換する必要があります。
②一部傾いている
雨樋の傾きは、雪の多い地域ではよく見られる劣化です。他にも台風や強風の際に何かが飛んできたことによって傾くことがあります。傾いている箇所が何ヶ所もある場合は部分交換での対応はできませんが、1箇所程度であればその部分のみの交換で対応することが出来ます。
③金具の曲がりや破損
雨樋を支えている金具も雪や雨、強風などで曲がったり錆びたりしてしまうことがあります。
被害が大きくなる前に新しい金具と交換します。
全交換
①破損箇所や劣化箇所が複数ある
破損箇所が複数ある場合は、全交換をおすすめします。特に部分補修はあくまでも一時的なものですので、早めに業者に相談して全交換の検討をされることをおすすめします。
②設置後20年以上経過している
雨樋は屋根や外壁に沿って配置されているため、雨や風、雪や紫外線を直接受けています。
その耐用年数は、使用している雨樋の材質にもよりますが、一般的に15~20年程度です。
20年以上経過している雨樋については、部分補修や部分交換ではなく、全交換をおすすめします。
雨樋修理が火災保険適応される条件
雨樋が天災によって破損し、修理が必要になった場合については、火災保険が適用される場合があります。ただし条件があり
①自然災害による損傷であること
②損害の総額が20万円以上(ただし特約次第)
③損害が発生して3年以内の損傷であること
があげられます
火災保険の風災・雪災・雹災が適用されたものになりますが、これらの補償が受けられれば実質の負担金なしで修理が受けられる場合があるというものです。
例えば台風や落雷、突風や大雪などによって雨樋が破損したり、雨樋を支える金具が外れてしまったりという場合には保険の対象になる事があります。
加入条件によって活用できるかどうか変わってきますので、必ず加入している火災保険の補償内容を確認してみましょう。また、火災保険はあくまでも『破損する前の状態に戻す』ことが大前提になります。他のリフォームも同時に行うことは出来ませんので注意が必要です。
火災保険で雨樋修理が補償されないケースとして以下のようなものがあります。
・雨樋の破損原因が自然災害以外(雨樋の詰まり)
・経年劣化による被害
・保険の補償範囲に入っていない
・免責金額以下の損害
雨樋の修理は火災保険で補償される場合がありますが、条件によっては修理不可の場合があります。
条件の中でも難しいのは、自然災害による損傷であると保険会社に認めてもらうことでしょう。そのためには、事故の状況を詳細にメモに残し、証拠写真も揃えておくことが大切です。
期間制限もありますので、早めに保険会社に連絡し、対応するようにしましょう。
【参考】火災保険を使って外壁塗装リフォームはできる…?
まとめ
今回はあまり目立たない場所にある「雨樋」についてお話させていただきました。いかがでしたでしょうか?
雨が多い日本において家屋を守る雨樋はなくてはならない設備です。定期的なメンテナンスは外壁や屋根の劣化を防ぐことができます。
普段は意識することの少ない雨樋かもしれませんが、雨樋がなかったら外壁の美観を損なうだけでなく雨漏りやシロアリ被害にまで発展する可能性があります。
何かが起きてからではなく、早めにメンテナンスをしておくことで慌てず対処できるよう外壁塗装の際は雨樋などの付帯も含めて、長期的なメンテナンス計画を立てておくと良いでしょう。