無機塗料を知る
無機塗料…。ここ数年の開発によって誕生した次世代塗料です。
最近、非常に耐久性の高い塗料として無機塗料をすすめてくる業者が増えてきています。
もしかしたら、この記事を読まれている方の中には業者にすすめられて無機塗料について色々調べている…という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
無機塗料は開発されてまだ新しいため、他の塗料に比べるとあまり聞いたことがない塗料ということもあり、詳細がわからない方も多いと思います。
無機塗料がフッ素塗料以上の抜群の耐久性を誇り優れた塗料であることに間違いはないのですが、多くの業者がメリットばかりを強調しがちです。そのため、「本当にいい塗料なの?」と疑問に思っている方も少なくないと思います。
しかし無機塗料を採用するにあたっては、いくつか注意点があります。選び方を間違えると期待通りの耐久性にならず後悔することになってしまうかもしれません。
そこで今回は無機塗料の特徴や注意点などをお話しさせていただきます。今後の参考にしていただければと思います。
無機塗料とは
無機塗料とは、「無機物(炭素を含まないもの)」を配合して作られた塗料のことです。
身近なもので言えば、ガラスや鉱石などが無機物です。紫外線で劣化せず、非常に硬くて燃えにくい性質があります。無機塗料は主にセラミックやケイ素を主成分にしています。
一方、よく使われている一般的な塗料は「有機物(炭素を含むもの)」を主成分にしているもので有機塗料と呼ばれます。有機物は、例えばウレタン、シリコンなどの樹脂のことです。
こうした有機樹脂は柔軟性に富んでいますが、紫外線によって劣化してしまいます。
無機物100%で作る塗料であれば半永久的に劣化しないものができますが、硬くて建物に塗ることはできなくなってしまいます。そのため、無機物の優れた性能を活かしながら、有機物を混ぜて使えるようにした塗料が「無機塗料」となります。(塗料メーカーによっては、「無機有機ハイブリット塗料」という表現を使うこともあります)
ちなみに…無機物100%の塗料は存在しません。
無機塗料の誕生
塗料には長い歴史がありますが、無機塗料が開発されたのは2002年頃です。まだ歴史的には新しく、ここ数年の開発によって誕生した次世代型の塗料と言えるでしょう。
外壁塗料にとっての大きな課題は紫外線による劣化です。このことから無機物は紫外線があたり続けても劣化しにくいという性質を持っているため、塗料に応用すればより高耐久な塗料が出来るのではないか…ということで開発されました。
半永久的である無機物を配合して作られた無機塗料は、優れた性能を持ちフッ素塗料以上の耐久性ということを前面に打ち出されました。
ただ、無機塗料は良いものと悪いものが入り混じって今の外壁塗装業界で使われています。
きちんと配合された無機塗料は本当に良い塗料なので、その知名度などを利用して、質の良くない無機塗料や、効果がしっかりと実証されていない無機塗料を30年持つ最高ランクの塗料だとすすめてくる悪徳業者なども出てきました。
またベンチャー企業が無機塗料を作りだし、OEMなどで広げ無機塗料のシェアを拡大してきました。そうした影響もあり、大手塗料メーカー(日本ペイントや関西ペイント、エスケー化研)も高耐久塗料として無機塗料を製造しラインナップしていったといわれています。
最近では色々なメーカーが無機塗料の市場に参入してきており、安く販売するところもあり、有機と無機の配合が適切に行われているかについては疑問です。塗料は施工してからある程度の年数が経たないと結果がわからないので、無機塗料で施工をする際には慎重に検討する必要があります。
メリット
・高い耐候性がある
無機塗料最大のメリットは、何と言ってもその耐候性(紫外線に対する強さ)です。
これは、無機成分自体が紫外線での劣化をほとんどしないからです。石やガラスは何十年経っても劣化しません。無機塗料の耐用年数は20年以上とも言われており他の塗料と比べて長いです。
・カビ・コケが繁殖しにくい
無機塗料は、カビ・コケ・藻が生えにくい性質(防カビ・防藻性)を持っています。
なぜなら、カビ・コケなどの栄養分である有機物の含有量が少ないからです。(ただし完全に滅菌するわけではありません。)
カビ・コケは建物の見た目を悪くしてしまいますし、根を張ることで建材自体を傷めてしまいます。無機塗料を使うことによって、外観を長く綺麗に保つことができます。
・汚れが落ちやすい
無機塗料は、水となじみやすい親水性という性質を持っており、表面についた汚れが雨で流れ落ちやすく、美しさを保ってくれます。雨が降ると塗膜と汚れの間に水が入って汚れを流してくれるのです。
※汚れがすべて完全に流れるわけではありません
・燃えにくい
無機塗料は非常に火に強く、燃えにくいという利点があります。そもそも無機物が燃えにくいもの(不燃性)だからです。有機物は燃えると二酸化炭素が発生し、黒く焦げて炭になります。
ただ無機塗料は100%無機ではなく、有機成分も含んでいるので、全く燃えないわけではないのですが、それでも有機塗料と比べて十分燃えにくいです。万が一近隣の火事などが飛び火してきても燃え移りにくいため、二次災害の確立を低くすることができます。
デメリット
・価格が高い
無機塗料は高機能で長く持つ塗料ですが、その分費用が高いです。
・ヒビ割れしやすい
無機塗料は無機物を主成分としているため塗膜が固くなります。
建物に大きな衝撃を受けた場合、ヒビ割れを起こす可能性があります。特に外壁の塗装をする場合は、弾性を考慮した塗料を使うこともおすすめします。
無機塗料の注意点
無機塗料の質には幅がある
まずは「無機塗料の中でも質に幅がある」ということです。
ひと口に無機塗料と言っても、様々な種類があり中にはシリコンやフッ素とあまり変わらない耐久性のものもあります。理由として“無機物が何パーセント含まれていたら無機塗料”という定義が決まっていないからです。
例えば、シリコン系塗料にほんの数パーセント無機成分が入っているだけでも、無機塗料と表記できてしまいます。そのため、有機塗料とほとんど同じ中身であっても、無機塗料と表記している塗料も出回っています。
基本的に大手塗料メーカーが製造する無機塗料であれば、無機物の含有量が少量と言うことはほとんどありません。逆に、あまり聞いたことのないメーカーの塗料や自社開発を謳う無機塗料には注意が必要です。
そうならないために…
質のよい無機塗料を選ぶには、実績のある大手塗料メーカーの製品で、カタログなどにきちんと試験結果(促進耐候試験や*屋外暴露試験)が掲載されているか確認しましょう。
(*屋外暴露試験:試験体を実際に自然環境下にさらして状態の変化を確認する方法)
悪徳業者に注意する
外壁塗料といえばウレタン、シリコン塗料が主流でしたが、現在では多くの種類があります。しかし、その耐用年数はよくもってフッ素系塗料で「15年~」、無機塗料で「20年~」となっており、30年という数字には程遠くなります。
「無機塗料なので30年は長持ちしますよ」悪徳業者がよく使う騙し文句です。このような騙し文句を決して鵜呑みにしないようにしましょう。
無機塗料には様々な種類があり、中には質の良くないものや効果が実証されていない無機塗料を高額な値段ですすめてくる悪質な業者もいます。
耐用年数が長い、汚れにくい、燃えにくいなどのメリットがある無機塗料ですが、それは大手メーカーが作っている信頼出来る塗料である場合のみのお話しです。悪徳業者がすすめてくる信頼出来ないメーカーというのは無機塗料でなくても不安部分が多く「20~30年ほど持つといわれた塗料が数ヶ月で剥がれてきた」といったことは本当によくあることです。もちろん、大手メーカー以外の塗料であっても、すばらしい塗料があるのかもしれませんが、判断する材料がありません。
現在大手塗料メーカーでは、外壁塗装で耐用年数が30年もつ塗料は未だに実現できでいない状況です。30年もつと言われる塗料を扱っている業者は、オリジナル塗料(大手塗料メーカー以外の塗料)の日本では実績の少ないものになります。特に訪問販売業者が扱う塗料としても有名ですので、即決せずに必ず他塗料と比較するようにしてください。このような信頼性に乏しい塗料の提案をしてくる訪問販売もいますので、即決などせずに他の業者でも塗料の相談をしながら施工技術や費用面も含めて比較していくことが大事です。
見積書の明記の仕方
見積書を確認する際“どこのメーカー”“詳しい塗料名”をきちんと明記されてあるか確認しましょう。
単に「無機塗料」としか明記されていない業者は要注意です。中には、あまり質の良くない塗料を高値で販売する悪徳業者も存在しますので十分注意されてください。
見積書には具体的な塗料名を明記してもらいましょう。
実績豊富な業者に依頼する
無機塗料は非常に扱いが難しい塗料になるので無機塗料の施工実績が豊富な業者を選ぶことも大事です。塗装した際の伸縮性が低いため、均等に塗るためには高い技術力が必要です。いくら高品質な塗料であっても均等に塗装できていなければ、すぐに剥がれてしまったり、ひび割れてしまったりする可能性が高くなります。また下地処理不足や、塗料を薄めて使うなどの手抜き工事をした場合も仕上がりは良くないです。そのような手抜き工事をせず、きちんと施工する業者を探す事もとても重要です。
まとめ
今回は無機塗料についてお話をさせていただきました。
無機塗料は、無機物(セラミックやケイ素など)を配合して作られた次世代の高機能塗料です。優れた耐久性などのメリットがありますが、それはきちんと配合された塗料の場合です。
よって一口に無機塗料といっても商品によって性能は様々です。
これから塗装をご検討されている方は、以下の注意点に気を付けて塗料選びをされてください。
①無機塗料の質には幅がある
②悪徳業者の謳い文句に注意する
③見積書の書き方に注意
④実績豊富な業者に依頼する
また営業マンが「無機塗料は30年以上もつのでおすすめですよ」といってすすめてくることがありますが、無機塗料に限らず、今現在販売されている塗料の中に30年以上もつと実証されている塗料はありませんので、そのような耐久性の高い塗料をすすめてくるのは悪徳業者である可能性が高いです。騙されないためには「悪徳業者かもしれない」ということを頭の片隅に入れておくだけで、騙されるリスクはグッと下がるはずです。
色々なメーカーが無機塗料の市場に参入してきており、安く販売してきているところもあり、有機と無機の配合が適切に行われているかについては疑問です。質のよい無機塗料を選ぶには、実績のある大手塗料メーカーの製品で、カタログなどにきちんと試験結果が掲載されているか確認しましょう。
以上のような注意点を十分に理解された上で、無機塗料を採用するかどうか検討されてください。
今回のお話が少しでもお役にたてれば幸いに存じます。